GESHEM INDUSTRIAL COMPUTING GUIDE

IP65とIP67の選び方:試験目的の違いと確認ポイント

IP65とIP67は、どちらも第1特性数字が「6」ですが、第2特性数字が示す水の試験目的は異なります。「5」は散水、「7」は一時的な浸水の影響を対象とします。数字の大小だけで優劣を決めたり、「屋内はIP65、屋外はIP67」と用途名だけで選んだりすると、実際の水のかかり方と受入条件が一致しないおそれがあります。

本稿は、産業用モバイル端末を選ぶエンジニア、IT/OT担当者、購買担当者、導入担当者を対象としています。IPコードの読み方、IP65とIP67が示す範囲、IP67とIPX5の関係、Geshemの確認済み4機種を候補へ入れる際の証拠と制約を整理します。

選定早見表

案件で起きること確認すべき証拠判断できる範囲その証拠だけでは判断できないこと
端末へ水が噴射される対象型番のIPX5/IP65資料、試験対象範囲、端子カバーとアクセサリーの状態該当構成が散水の試験目的に対して宣言または検証されているか一時的・継続的な浸水、高圧・高温洗浄、薬品洗浄
端末が一時的に水へ入る可能性がある対象型番のIPX7/IP67構成、試験資料、浸水後の取扱手順該当構成が一時的な浸水の影響に対して宣言または検証されているか長時間の水中使用、IP68、IPX5試験の実施
散水と一時的な浸水の両方がある両方の試験目的を個別にカバーする資料、表示、受入条件2種類の水リスクを別々に受入検査へ組み込めるか「IP67」の表示だけで両方の試験が完了していること
落下、温度差、塩分、危険場所も対象になる各条件に対応する仕様書、試験資料、法規文書IP保護等級とは別の受入マトリクスを作成できるかIP65/IP67が耐落下、広い動作温度範囲、防爆、耐腐食も保証すること
IPコードの第1特性数字と第2特性数字、およびIP65とIP67の試験目的の違い
図1:コードと試験目的の関係を示した図です。試験装置、条件、判定方法は、正規に入手した規格本文と対象型番の試験資料で確認してください。

IPコードの読み方

第1特性数字は固形異物に対する保護を示す

IPコードの第1特性数字は、危険な箇所への接近と固形異物の侵入に対する外郭の保護を示します。IP65とIP67はいずれも「6」であり、防じんの区分です。ただし、この数字から耐摩耗性、耐腐食性、保守不要、あらゆる粉じん環境への適合を推定することはできません。

第2特性数字は水の侵入に対する保護を示す

第2特性数字は、水の侵入に対する外郭の保護を示します。IPX5は散水、IPX7は一時的な浸水の影響を対象とします。水の浸入経路が異なるため、要求仕様には「防水」とだけ書かず、飛まつ、散水、一時的な浸水、高圧・高温洗浄、薬品洗浄、長時間の水中使用のどれを想定するかを記載します。

本稿で参照する規格情報

IEC 60529の公式ページでは、同規格を外郭による保護等級(IP Code)の分類規格として示しています。中国の現行規格であるGB/T 4208-2017の公式情報はIEC 60529:2013を同等採用しており、2025年の再審査後も有効と記録されています。

公開検索ページから試験条項の全文を安定して参照できないため、本稿ではノズル距離、流量、圧力、試験時間、浸水深さを数値で記載しません。正式な要求仕様と受入検査には、正規に入手した規格本文と、対象型番・発注仕様・端子状態に対応する試験資料を使用します。

IP65とIP67の違い

比較項目IP65IP67
固形異物に対する保護第1特性数字は6:防じん第1特性数字は6:防じん
水に関する試験目的第2特性数字は5:散水第2特性数字は7:一時的な浸水の影響
最初に確認する現場条件水が噴射されるか、どの方向・状態で当たるか端末が一時的に水へ入る可能性があるか
資料へ結び付ける項目型番、外郭範囲、端子カバー、アクセサリー、構成、試験資料型番、IP67オプション、端子カバー、アクセサリー、構成、試験資料
直接は証明しない項目一時的・継続的な浸水、高圧・高温洗浄、薬品洗浄IPX5試験の実施、継続的な浸水、IP68、高圧・高温洗浄

IP67は数字だけでIP65の代わりにはならない

第2特性数字を、条件なしに積み上がる性能順位として扱うことは適切ではありません。IPX5とIPX7は水の浸入経路と試験目的が異なります。型番にIP67と記載されていても、「7は5より大きい」という理由だけでIPX5の散水試験も完了しているとは判断できません。

現場に散水と一時的な浸水の両方がある場合は、各要求を対象にした試験資料、製品表示、または契約上の確認を取得します。試験品の仕様、端子カバー、アクセサリー、判定範囲も受入文書へ残します。

IP65の散水とIP67の一時的な浸水を個別に確認する証拠経路
図2:IP65とIP67は異なる証拠経路です。両方を要求する案件では、数字の大小ではなく試験資料の対象範囲を照合します。

IP67は長時間の水中使用を意味しない

IPX7は一時的な浸水の影響を対象とし、継続的な水中運転やIP68の宣言ではありません。水中での操作可否、浸水後に端子カバーや電池室を開けるまでの手順、充電再開の条件、シール部品の点検方法は、製品説明と試験資料に従います。

IP65も任意の洗浄条件を保証しない

「通常の水洗い」「軽い洗浄」といった表現は、受入条件として曖昧です。散水がある場合は、方向、作用時間、端末の姿勢、端子カバー、使用液体、清掃手順を記録し、該当規格と型番資料に照合します。高圧、高温、薬品を用いる洗浄は、IP65の表示だけでは判断できません。

業界名ではなく水の浸入経路から選ぶ

現場条件要求仕様へ記載する内容保護等級の確認方向別に確認する項目
主な課題が粉じんで、明確な水リスクがない粉じんの種類、濃度、清掃方法、端子の使用頻度IP6Xの対象範囲を確認し、必要な水の等級は別に定義する放熱、摩耗、静電気、保守周期
雨、飛まつ、散水が端末へ当たる水の方向、作用時間、端末の姿勢、端子カバー、清掃手順対象構成のIPX5/IP65資料を確認する濡れた手での操作、画面、温度、腐食
端末が水没する可能性がある浸水の状況、回収までの時間、通電状態、回収後の処置IPX7/IP67構成、試験資料、保守条件を確認する落下、ハンドストラップ、データ保護
散水と一時的な浸水の両方がある2種類の水作用と各受入資料両要求を個別にカバーする資料を取得する端子、アクセサリー、修理後の再検査
高圧・高温洗浄、薬品、塩分、長時間の水中使用がある液体、圧力、温度、濃度、作用時間、適用法規IP65/IP67を十分条件として扱わない材料、耐腐食性、専用等級、業界規制

倉庫、工場、港湾、水処理、鉱山、食品関連という業界名は、必要な質問を洗い出す手掛かりにはなります。しかし、保護等級、材料、温度、清掃、法規を確定する根拠にはなりません。同じ業界でも、水の浸入経路と端末の使用状態は案件ごとに異なります。

水の作用方法、端子状態、複合条件、資料から堅牢タブレットPCの保護等級を選ぶマトリクス
図3:先に受入可能な現場条件を定義します。特殊洗浄、腐食、長時間の水中使用には、IP65/IP67以外の追加根拠が必要です。

端子、アクセサリー、保守状態を受入条件へ入れる

端子カバーを閉じた状態と作業状態を照合する

USB、USB Type-C、音声端子、SIM/TFカードスロットなどの開口部は、端子カバーやシール構造へ依存する場合があります。試験資料に記録された端子状態と、現場の作業状態を一致させます。作業中にケーブルを接続し続ける、端子カバーを開く、ドックへ装着するといった運用では、同じ保護等級が維持されると決めつけられません。

電池室と着脱部品を確認する

着脱可能バッテリー、カードスロットカバー、修理用の開口部は、シールの点検箇所になります。電池を取り外せることはホットスワップを意味せず、カバーを開けた状態の保護も保証しません。着脱手順、異物除去、シール部品の点検、再閉鎖方法を作業手順書へ記載します。

経年変化と修理後の状態を管理する

保護性能は、外郭、シール部品、組立状態、保守状態に左右されます。落下、頻繁な抜き差し、洗浄剤、温度サイクル、修理によって状態が変わる可能性があります。点検・交換周期と、修理後に再検査が必要となる条件を供給者と合意します。

外郭構造だけで保護等級を判断しない

二重シール、アルミダイカスト、光学接着、特定形状のガスケットは、IP65やIP67の定義そのものではありません。対象型番の図面、材料情報、試験資料がない限り、一般的な断面図を製品の保護等級の根拠には使いません。

IP保護等級と複合条件を分けて検証する

落下と振動

IP保護等級には落下と振動の評価が含まれません。今回確認した4機種の仕様書で記載されている落下条件は、1.2 mの高さから木製床面への自由落下です。コンクリート面や、これを超える高さへ読み替えられません。実案件では、携帯高さ、床材、保護ケース、ハンドストラップ、取付金具、端末の向きを受入条件へ加えます。

動作温度と結露

低温、高温、急激な温度変化、結露は個別に評価します。IP67の表示から、低温時の電池性能、高温での連続運転、結露後に直ちに開蓋・充電できることは判断できません。

塩水噴霧、腐食、洗浄剤

港湾、沿岸、食品、化学関連の現場では、塩分や薬品が問題になる場合があります。IP保護等級が示すのは、規定された条件下での固形異物と水の侵入に対する保護です。外郭、塗装、端子、シール材料の耐腐食性は別の根拠が必要です。

表示、通信、ソフトウェア

屋外作業では、輝度、視野角、手袋や濡れた手での操作、セルラー通信、GNSS、電池、業務ソフトウェアも確認します。保護等級は、MES、WMS、点検アプリケーション、MDM、VPN、オフライン同期との互換性を証明しません。

Geshemの確認済み4機種とIP仕様

Geshemの確認済み4機種におけるIP65標準仕様とIP67オプションの状態
図4:候補型番と仕様書上のIP状態を識別する図です。防じん、散水、浸水の試験写真や認証資料ではありません。
型番確認済みのIP状態候補となる案件制約と案件確認
TPC-A100本体全体IP65Windows 10/11、10.1型プラットフォーム、本体全体IP65を必要とする案件IP67/IP68の根拠は未確認。対象構成の試験資料を取得し、端子、アクセサリー、試験状態を確認する
TPC-GS1081SIP65Windows、第11世代Core、主・補助電池のホットスワップとIP65を必要とする案件IP67/IP68の根拠は未確認。IP65の外郭範囲、端子状態、試験資料を確認する
TPC-GS109M3AIP65標準仕様、IP67オプションAndroid 13、5G、10.1型1000 nitとIP67構成を必要とする案件IP67は標準仕様ではない。発注仕様を固定し、端子、アクセサリー、修理、試験資料の対象範囲を確認する
TPC-GS0882TIP65標準仕様、IP67オプションAndroid 12、8型の移動データ収集とIP67構成を必要とする案件IP67は標準仕様ではない。IP68、長時間の水中使用、高圧・高温洗浄の根拠は未確認

型番表を使う手順

案件に「IP67が必要」とだけ書かれている場合は、実際の水の浸入経路を確認します。一時的な浸水を受入条件へ入れる必要があると確認できた後、TPC-GS109M3AとTPC-GS0882TのIP67オプションを候補にします。その上で、OS、画面寸法、輝度、通信、データ収集モジュール、電池、アクセサリーを照合します。

TPC-A100とTPC-GS1081Sは、現時点の確認資料ではIP65候補です。堅牢タブレットPCという製品分類だけを理由に、IP67やIP68を仕様へ追加しません。

要求仕様と受入検査の作り方

「IP67の堅牢タブレットPCが必要」という一文を、次の確認項目へ分解します。

  1. 粉じんと水の発生源、作用方法、端末の姿勢、頻度、通電・使用状態を記録する
  2. IPX5、IPX7、または両方のどれを検証するか決める
  3. 型番、発注仕様、外郭範囲、端子カバー、電池、カードスロット、アクセサリーを固定する
  4. 適用規格、試験資料番号、試験品構成、判定範囲、文書版を供給者へ確認する
  5. 試験後・浸水後に操作、開蓋、充電を再開する条件と点検手順を記載する
  6. 落下、振動、温度、結露、塩分、洗浄剤、表示、通信の条件を別項目として定義する
  7. 最終の業務ソフトウェア、ネットワーク、モジュール、アクセサリーで実機検証する
  8. 異常、修理、シール部品の交換、再検査の手順と責任範囲を交付文書へ残す

調達・受入検査チェックリスト

状態確認項目
水の作用を、飛まつ、散水、一時的な浸水、継続的な浸水、高圧・高温洗浄、薬品洗浄へ分けた
IP保護等級を、型番、発注仕様、標準/オプション、外郭範囲へ結び付けた
端子カバー、カードスロット、電池室、スピーカー、マイク、ドック、アクセサリーの状態を記録した
散水と一時的な浸水の両方が必要な場合、各試験目的をカバーする資料を確認した
仕様書、試験資料、規格版、資料番号、試験品構成を保存した
落下高さと床面、振動、温度、結露、塩分、洗浄剤を個別に確認した
画面輝度、手袋・濡れた手での操作、通信、測位、電池、業務ソフトウェアを現場で検証した
清掃、開蓋、充電、電池交換、端子使用、シール点検の作業手順を作成した
落下、修理、シール交換後の点検・再検査方法と責任を決めた
「防水」「水洗い可能」「屋外用」といった検査条件へ変換できない表現を使っていない

誤解されやすいポイント

IP67のほうが数字が大きいため、すべての水条件で上位だと考える

第1特性数字は同じですが、第2特性数字が対象とする水の作用は異なります。必要な保護内容に対応する試験資料を確認し、IPX7だけでIPX5の実施を推定しません。

屋外なら常にIP67を選ぶ

屋外でも、粉じんと一時的な雨だけの案件もあれば、浸水、塩分、低温、強い周囲光を伴う案件もあります。場所の名称ではなく、リスクと受入条件から等級と追加検証を決めます。

IP65なら水圧や温度を問わず洗浄できる

水圧、距離、方向、温度、液体が型番の試験範囲を超える場合があります。「水洗い可能」という表現を、具体的な受入条件と試験資料へ置き換えます。

IP67なら長期間水中で使える

IPX7は一時的な浸水の影響を対象とし、継続的な水中運転やIP68を意味しません。製品説明と試験資料が明示しない運用は要求仕様へ追加できません。

IP保護等級があれば保守は不要になる

端子カバー、シール部品、カードスロット、電池室は、抜き差し、異物、落下、洗浄、経年変化の影響を受けます。保守状態も受入検査の一部です。

仕様書にIP保護等級があれば認証書も公開されている

仕様書の宣言、型式試験資料、認証書は同一ではありません。案件で必要な証拠レベルと公開範囲を、調達開始時に決めます。

FAQ

IP65とIP67の防じん性能は同じですか

どちらも第1特性数字が6であり、防じんの区分です。ただし、耐摩耗性、耐腐食性、あらゆる粉じん濃度での保守不要まで示すものではありません。

IP67ならIP65の散水試験も必ず完了していますか

数字だけでは判断できません。IPX5とIPX7は異なる水の作用と試験目的に対応します。散水と一時的な浸水の両方が必要なら、試験資料が各要求をカバーしているか確認します。

IP67の堅牢タブレットPCを長時間水中へ置けますか

そのようには判断できません。IPX7は一時的な浸水の影響を対象とし、継続的な浸水、IP68、水中操作を意味しません。型番ごとの説明と試験資料を確認します。

倉庫や工場ではIP65とIP67のどちらを選びますか

実際の水の浸入経路から決めます。散水を検証する案件はIP65/IPX5、一時的な浸水リスクがある案件はIP67/IPX7の資料を確認します。両方があれば個別に根拠を取得します。バーコード、Wi-Fi、落下、電池、ソフトウェアは別に検証します。

GeshemでIP67を選べる型番はどれですか

今回確認した資料では、TPC-GS109M3AとTPC-GS0882TがIP65標準仕様、IP67オプションです。IP67は発注仕様ごとに確認します。TPC-A100とTPC-GS1081Sは、現時点ではIP65候補です。

落下後も同じIP保護等級が維持されますか

維持されるとは限りません。落下により外郭、端子カバー、シール部品の状態が変わる可能性があります。落下または修理後の点検、再検査、責任範囲を案件文書へ記載します。

規格・仕様書と次のアクション

規格情報:

確認済み仕様書:

推奨する確認手順:

  1. 水と粉じんの作用方法、端末の使用状態、他の環境条件を整理する
  2. IPX5、IPX7、または両方を受入対象として定義する
  3. OS、画面、通信、データ収集、電池から候補型番を絞る
  4. 標準/オプション、端子、アクセサリーを含む発注仕様を固定する
  5. 試験資料を取得し、最終構成で水、落下、表示、通信、ソフトウェアを実機検証する

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